【私が通訳になるまで23】通訳学校の通学期間と進級と現実

 こんにちは、東京在住英語同時通訳者の山下恵理香です。Skypeでオンライン英語指導オンライン通訳訓練講座も提供しています。 

 

 自己紹介を兼ねて書いている「私が通訳者になるまでシリーズ」ですが、サイマルアカデミー卒業まではまだまだ長くなりそうなので、このあたりで一旦私のサイマルアカデミー通学歴を整理しつつ、通訳学校卒業までにかかる期間や進級の実情、そして通学の意義について書きたいと思います。

 

 最初のクラスの話を書く前に書いておくべきだった記事で今更ではありますが、そこは流してお付き合いくださいませ(笑)

 

 ちなみに私はこの記事を書くことで、これから通訳学校に通う人や現在通学中の人のやる気を削ぐつもりは全くありません。あくまでも私の体験談の一部として書くだけですので、そこは誤解されませぬよう。

 

 それではまずは私の通学歴から。

 

 私がサイマルアカデミーに入ってから卒業までにかかった期間は、4年半でした。内訳は以下の通り。

 

実践英語レベル7クラス(半年)

通訳コース準備科(1回/半年)

通訳コース入門科(2回/1年 ※最初の進級試験が不合格で1回再履修。2度目のトライで進級。)

通訳コース通訳科(前後期各1期/1年)

通訳コース同時通訳科(前期1期&後期2期/1年半 ※最初の卒業試験が不合格で後期を再履修。2度目の卒業試験で合格・卒業。)

※通訳科&同時通訳科は前期から後期に進む際には進級試験は無し。

 

 通訳学校の進級・卒業にかかる年数は人それぞれです。準備科や入門科から進級できずに何年も同じ科を再履修をする人もいれば、入学時に通訳テストを受けて同時通訳科から入りきっちり1年で卒業する人もいます。全体で見ると、私の進級・卒業はかなりスムーズなケースでした。

 

 試験に落ちたのは入門科からの進級試験で1回、同時通訳科の卒業試験で1回の2回だけです。まあスムーズとは言ってもこの先回想記事を書き進めて行くと、「何でそれで進級になったの?」と疑問を持たれるような進級の仕方もあったのですが。ただしそれはそれで通訳学校の(サイマルアカデミーの?)特異性とも言えます。それに私は典型的な「本番に強いタイプ」でした。進級した時の状況が如何に特殊でも、理由もなく進級させてくれるような場所ではないとだけ書いておきます。この話は長くなるので、それについてはまたゆっくり。

 

 今回あえてこのお題を選んだのは、あまり知られていない通訳学校の過酷な現実を包み隠さずに書いてみようと思ったからです。これから通訳学校に通おうかと悩んでいる方や、通訳学校ってどんなところだろうと思っている方が恐らく一番知りたい、でもなかなか聞けない部分ではないかと思います。もしもご縁があってそんな方がこのブログに辿り着いたならば、いち経験者の話として参考にしていただければ幸いです。

 

 まず通訳学校の厳しいところは、入学した時点で求められる英語を含む総合的な通訳者としての資質の高さです。もちろん入学時のレベルチェックでは英語力を重視するわけですが、レベルチェックが高成績でなければ通訳コースに入れませんし、通訳訓練を受けるなら英語力は高くて当たり前ですから、入学後に英語力云々という話にはもうなりません。同じレベルかそれ以上の人間が集まるクラスですから、英語ができることは何一つ自慢になりません。

 

 ちなみにひとつの目安としてTOEICの話をするのなら、通訳コース準備科に入る時点で900点以上の実力が最低ラインだと思います。準備科の時点でも英検1級保持者やTOEIC満点の人はゴロゴロいます。

 

 そして通訳の基礎技術については何も知らない状態から、突然訓練は始まります。初回から緊張と自分の実力不足のダブルパンチに心を打ちのめされます。英語ができるからと言ってどうにかなるような授業内容ではありません。最初はまるで歯が立たない衝撃と混乱で毎回パニックでした。周りができる人ばかりだから失敗が怖い。でも基礎訓練では失敗だらけ。訳せと言われても言葉が出ない、文章が組み立てられない、パニクってとっ散らかる。こうしてここで必要なのは英語力だけではなく通訳者としての総合力なのだと、嫌と言うほど思い知らされます。もちろん序盤のコースはその総合力を鍛えるためにあるのですが、習うより慣れろの訓練方式なのでこちらの能力が伸びるのを待っていてはくれません。何とか訓練の進む速度に追いつこうと必死で食らいつきます。これについて行けなくなる、または疲れてしまうと、ここで最初の脱落者が出ます。

 

 次に脱落者が出るタイミングは、その先の進級試験。

 

 サイマルアカデミーに限らず通訳学校では、一度も躓かずにストレートで卒業する人は非常に稀です。誰しもどこかで進級できずに同じ科を再履修するのが普通です。先述の通り、何年も同じ科を再履修する人もいます。進級試験で跳ね返されて、進級を諦めて通学を辞めてしまう人も多くいます。

 

 そして何よりも通訳学校が過酷なのは、そんな高スキルの人材が集まって尚、卒業まで辿り着く人数が極端に少ないところです。私が最初の準備科で一緒だったクラスメイト12人のうち、卒業したのは以前ご紹介したKさんと私の2人だけでした。先述の通り途中で疲れて、または進級できずに辞めてしまう人もいますし、仕事や家庭等様々な事情から通学を断念する人もいますし、なんと卒業試験までこぎつけて諦めてしまう人もいます。苦労して最後のクラスまで行ったのに辞めるなんてと思うかもしれませんが、そこにたどり着くまでに大抵皆さんヘトヘトになっている上に、一番高度なパフォーマンスを要求されるクラスですから、この最後のクラスと卒業試験が精神的にも体力的にも一番キツイのです。

 

 ドラクエに例えるならばべホイミまでしか使えない状態でラスボスと対峙しなければならないくらい。(分からない人はごめんなさい。私実は大のドラクエ好きです。)

 

 私は最初の卒業試験の日、試験を終えて学校を出た途端に胃に激痛が走り動けなくなりました。自他ともに認める「本番に強い」私が。あまりの痛みに救急車を呼ぼうか迷い、結局近くのホテルに一泊して翌日帰宅しましたが、今までに経験したことのない緊張と痛みでした。

 

 最後の最後で力を振り絞って挑んだ試験で実力が及ばず再履修&再試験となった時、「よしもう一回!」と気持ちを立て直してモチベーションを維持するのはとても難しいのです。私自身この壁を越えるには自分の実力は遠く及ばないのではと思い途方に暮れましたし、再履修せずに逃げてしまおうかと本気で思いました。

 

 今改めてサイマルアカデミー生だった当時を振り返ると、先日の記事にも書いた通り、入門科までは比較的「楽しかった」と思い出すことができます。スパルタの基礎訓練は大変でしたが、慣れてからは楽しむ余裕もありました。入門科までは求められる訳の質も「頑張ってるから良し」というレベルまででした。

 

 しかし通訳科に進級してからはそうはいきません。「通訳者として商品になる訳を出せるか」という目線で評価されるようになります。この違いには大いに悩み、苦しみ、のた打ち回りました。

 

 この頃から授業が怖くなり、通学が苦痛になり、全ての余裕がなくなり、胃薬が手放せなくなりました。周りのレベルが高く毎回自分ばかりが下手くそなパフォーマンスで恥を晒していると思い込み思いつめ、クラスメイト達の整った訳を聞いては深く落ち込みました。日々映画やニュースで何となく英語を聞いていても聞き漏らすことが恐怖になって避けるようになり、日課にしていたシャドーイングも怖くてできなくなりました。絵に描いたような負のスパイラルです。

 

 それでも何とか授業の予習をし、気持ちが楽な日だけでもシャドーイングをし、ニュースを聞いて本を読んで知識を入れることは止めないように努めました。今だから告白できますが、授業の復習までは気力も体力も回らないことがほとんどでした。後半の2年間はどれもギリギリでした。

 

 毎日ガツガツ勉強していた(勉強している自分に酔っていた)準備科や入門科の頃には想像もしませんでした。通訳の勉強が辛くて苦しくて逃げたくて、でも日々半歩でも前に進もうと、進めない日があっても後ろに下がることだけはしまいと、必死でした。この極限状態は同時通訳科に上がってから更に悪化し、卒業まで解放されることはありませんでした。卒業してから数年が経ちますが、今思い出しながら書いていても胃が痛いです。

 

 これを苦労話の押し売りと取るも、これだけ過酷な通訳学校を卒業した自慢や嫌味と取るも、人目を引くために大げさに書いているだけと取るも、読む方次第です。もちろん全員が全員私と同じ経験をするわけではありません。これは私の体験談にすぎません。私が精神的に弱かっただけかも?そうかもしれません。いずれにせよここに書いたのは嘘偽りのない、私が経験した事実です。

 

 これが私が見た通訳学校の現実です。

 

 長くなったのでここで切ります。

 次回はこの続きとして、通訳学校に通う意義について書こうと思います。

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行