私が見たアメリカの人種差別

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 

 

 先週の記事ではトランプ氏の風刺コメディ動画をご紹介しました。トランプ氏の人種差別主義や男尊女卑の精神もしっかりネタにされていましたね。

 

 アメリカで無くならない人種差別。今回から数回に分けて、私がアメリカで経験した人種差別について書こうと思います。

 

 

 まずは以前から度々このブログに登場している、超保守派で人種差別主義者&言語差別主義者のヒューストンのホストマザーの話から。

 

 彼女の激しい言語差別主義者っぷりは以前の記事に書いた通りです。そして彼女が言語差別主義者だったが故に、私の英語の発音は劇的に改善しました。何度も書きますが、彼女は私の恩人です。私がここでホストマザーについてどう書こうとも、そこに一切の悪意はありません。

 

 さて、ホストマザーの言語差別の対象は主にテキサスに多いヒスパニック系の人たちや、アジア人を含むノンネイティブの人たちでした。しかし人種差別という括りで見ると、彼女の差別の一番の対象は同じアメリカ人である黒人でした。

 

 彼女の黒人差別発言は色々ありましたが、一番印象に残っているのがこれです。

 

 ホストマザーのオフィスは彼女の人の好き嫌いが激しいせいもあり、人の入れ替わりが激しい職場でした。そこにある時、一人の白人女性が加わりました。彼女はシングルマザーで、黒人の男性との間に生まれた子供がいました。アメリカでは家族の写真を持ち歩く人が多くいます。まだよくお互いを知らない相手には自分だけでなく家族の話をすることもありますし、そんな時に写真を見せたり、オフィスのデスクに飾ったりします。

 

 彼女がホストマザーのオフィスに来て間もない頃、オフィスの職員で彼女を囲んで彼女の話を聞く機会がありました。当然子供の話にもなり、写真を見せ、みんなで「可愛い~♪」と声を上げる...そんないつもの光景でした。もちろんホストマザーもその輪の中にいました。

 

 その日の帰宅中の車の中でホストマザーは、人が変わったようにその白人女性を聞くに堪えないほど汚い言葉で罵りました。

 

 「黒人の子供を産むなんて信じられない」

 「頭がおかしい」

 「汚らしい」

 

 肩で息をするほどに憤っていました。私は本当はいけないことと知りながら、物の分からない子供のふりをして質問しました。

 

 「どうして黒人はだめなの?」

 

 ホストマザーの答えはこうでした。

 

 「私達の育った時代はそういう時代だからよ。白は白、黒は黒。何でもそうだった。彼らには彼らの教会があり、学校があったの。白と黒は交わらないの。」

 

 ‟それが常識だから” 単純明快な答えでした。その感覚を理解することはできませんでしたが、彼女にとってそれが取り去ることのできない壁だということは理解できました。

 

 続けてもうひとつ質問しました。

 

 「じゃあ何で私はいいの?」

 

 彼女は先ほどの答えと同じくらい即答で、

 

 「だって貴女は違うから。」

 

 その‟違う”に明確な何かがあるようには思えませんでした。ただホストマザーの中には理屈ではない明確な違いがあるというのは理解できました。そして彼女たち世代、つまりトランプの世代がいる限り、白人の黒人差別はなくならないことが理解できました。

 

 しかし最近は私のこの考えも変わってきています。

 

 私は長い間、ホストマザーたちの世代がいなくなる頃には黒人差別はなくなるのだろうと楽観していました。しかしながら最近SNSの普及で明るみに出てくるようになった白人警官の黒人一般市民の射殺事件のような話を聞いていると、これまで表に出てきていないだけであらゆる世代にこの差別意識が浸透しているのだということを感じます。アメリカからこの差別が無くなる日は来ないのではないかと、今では思うようになりました。

 

 私は人種差別主義者を肯定するつもりはありません。しかし1年弱ホストマザーと共に暮らしたことで、あのような人たちの思考を変えることがほぼ不可能であることも理解しています。これもまたアメリカと言う国を理解するにあたり、とても得難い経験でした。

 

 この話ひとつを取っても、先週の動画の内容が誇張でないことがお分かりいただけると思います。悲惨な過去に戻ろうなどとせず、差別ができるだけ無くなっていく未来を目指してほしいものです。

 

つづく。 

 

 

 

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