同時通訳者Erika流「リテンション&リプロダクションの自主練習方法」

 こんにちは、東京在住英語同時通訳者の山下えりかです。Skypeでオンライン英語指導オンライン通訳訓練講座も提供しています。 

 

 通訳訓練最大の課題と言っても過言でないほど多くの通訳志望者を悩ませるのが、話者の話を正確に記憶するための記憶力を鍛える「リテンション&リプロダクション」の基礎訓練です。サイマルアカデミー時代は私自身もこの訓練に苦しみましたし、現在私の通訳講座を受講されている生徒さんたちにとっても大きな課題となっています。そして生徒さんのほぼ全員に質問されたのが、「リテンションてどんなトレーニングをすれば良いんですか?」でした。

 

 リテンションの詳細については記憶する担当のコビトさんの記事参照。

 

 残念ながら、私は通訳訓練時代にリテンションの自主練習はやっていませんでした。いえ、正確には「できませんでした」。リテンションの練習は「集中して聞いて、正確に記憶して、一言一句正確に声に出して繰り返す」というものであるため、一人でやることがとても難しいのです。

 

 全力で集中しなければならない練習なので、一人であれこれ複雑な操作をしながらではできません。かと言って誰かに練習相手になってもらおうにも、なかなかこんな練習に付き合ってくれる人はいません。一番苦手でどうしても必要な能力なのに自主練習で強化したくてもできない、それがリテンションの辛いところです。

 

 ちなみに私がどうやってリテンション力を伸ばしたか言うと、週2回のサイマルアカデミーの授業でやる演習に最大限集中して、数年間の時間をかけて鍛えました。それ以外の方法が無かったのです。

 

 それでも生徒さんたちに何度も質問されその回数と頻度が増える度、何か方法が無いかと考えていました。

 

 そしてついに!!!リテンションの自主練習方法をあみ出しました!!!!

 

 前振りが長くなりましたが、通訳訓練を開始した当時から11年、通訳学校を卒業して7年、今になってやっと思いついた絶対に効果的なリテンションの自主練習方法を動画にまとめたので、ご覧ください。

 

 

【追記】 音源をスピーカーで流すとSpeechnotesが音源の音までディクテーションしてしまうことがあります。自分のリプロダクションだけを正確に音声認識させるため、音源はヘッドホンまたはイヤホンで聞いてください。

 

参考リンク

 

NHKラジオニュース

 

Speechnotes

 

 以前ある生徒さんが「自分の言ったことをメモして音源と照らし合わせてリテンションの練習をやっている」と話してくれたことがありました。自主練習が難しいリテンションの練習法としては良い方法だと思ったものの、これだといちいちメモするのに時間がかかりすぎますし、自分の言ったことを間違えて書いてしまう可能性も否定できないなという印象を持ちました。またメモをするのに時間を取られると練習がスピーディーにできないのも気がかりでした。そこで思い出したのが、このSpeechnotesでした。

 

 実は私、5月21日発売の自著《初心者のための英語学習ガイド~「英語をしゃべりたい!」と思ったらいちばんはじめに読む本》の執筆中、色々試しているうちにSpeechnotesと出会い、その正確さに驚かされたのです。本の中では英語の発音練習のためのツールとして紹介しているのですが、これだけ優秀なツールですからもちろん、通訳訓練にも応用ができます。

 

 いかがでしょうか。パソコンにマイクを接続し、ウェブブラウザ上でSpeechnotesをオンにしておけば、あとは練習音源を自分のタイミングで一時停止してリプロダクションをするだけなので、集中の妨げになるような複雑な作業は不要で、リズムよく練習を進められます。

 

Speechinotesはダウンロードもインストールも不要でオンラインで使える音声メモソフトです。上記リンクからアクセスしてください。

 

 また文字で自分のリプロダクションの内容を確認できるので、リプロダクションしたそばから言ったことを忘れてしまう心配もありません。リテンションのトレーニングはメモを使わないので、必要な作業がクリックだけというのも楽ですよね。

 

 この方法は、音声認識機能の精度がここまで上がった今だからこそ可能になった方法です。私が通訳訓練を受けていた頃はまだここまで進んでいなかったので、やはり当時では無理だったなと思います。技術の進歩は素晴らしいですね。

 

 音声認識の精度が上がったとは言え、はっきりと発音&発声しなければ誤認されることもありますから、英語だけでなく普段あまり気にしない日本語の発音にも意識が行くようになるのもこの勉強法の良いところです。どちらの言語でも自分の発音や発声を客観的に評価することは難しいですが、音声メモで言った通りの文章になっているかどうかで自分の発音・発声の精度を確認することができます。

 

 動画ではパソコンのブラウザで音源のページとSpeechnotesを開いてタブを切り替えながら使っていますが、SpeechnotesはAndroid版もあるので、パソコンで音源を流しながらスマホに向ってリプロダクションすることも可能です。iOSユーザーさんは類似アプリを探せば同じようにできるはずです。

 

 この練習をやる時の注意点は、シャドーイング同様に雑音を遮断するためにイヤホンやヘッドホンを使うことと、一度に沢山やろうとせずに、毎日5~10分程度をコツコツと積み上げて行くということです。またリテンションは「聞いて覚える」訓練なので、音源に原稿があったとしてもそれは最後の答え合わせまで見ないように注意しましょう。動画では4つの文章を一気にやってまとめて確認していますが、1文ずつ確認してももちろん良いです。

 

 練習音源の選び方については、動画で使用しているNHKラジオニュースを使うのも良いですし、著名人のスピーチを少しずつやるのも良いと思います。自分が使いたい音源を使ってください。ただしリテンションは「鮮度が命」です。同じ教材を何日も繰り返しやっても意味が無い演習なので、ひとつの音源(または箇所)を使うのは1日の練習の間だけにして、毎日新しいものを使いましょう。同じ音源でも長さのあるものなら、使う箇所を変えればそれでOKです。あとでそれをシャドーイングに使うのも良いですね。

 

 ちなみに1日の練習の中で1回目、2回目、3回目と何度かリプロダクションをやり直して精度を上げることはもちろん大切なことです。ただし目安は4回まで。4回目のトライまでに完璧なリプロダクションができるように心がけましょう。

 

 リテンションは語学に長けた通訳者・通訳志望者と言えど、通訳訓練を始めるまではほぼ馴染みの無いスキルです。つまり他にどんな力があってもそこはそれまで使っていなかった筋肉なわけですから、地道に筋トレを重ねなければ力はつきません。焦らずに育てて行ってください。

 

 またこれは自主練習としてとても有効な方法である一方で、話し方、発音、テンポ、表情等の癖は自己判断と自己修正が難しく、自分一人での練習では聞き手を意識することも難しいものです。通訳者の仕事には必ず通訳者の訳を聞いている人たちがいますから、常に目の前にいる誰かを意識し、分かりやすく伝えるための総合的な表現力を身に付けることが重要です。そのためやはりリテンションであっても通訳であっても、通訳スクールや個人レッスンで定期的に第三者のチェックと指導を受けることが必要だと思います。

 

 これを機に私も日々のトレーニングのシャドーイングと音読にリテンションも加えようと思います。リテンションに悩む通訳志望者さんや現役通訳者さんにも、お役立ていただけたら嬉しいです!

  

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行