【私が通訳になるまで33】通訳学校と通訳科4(オーディション形式の進級試験)

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 サイマルアカデミー通訳コースの入門科(現通訳2)と通訳科(現通訳3&4)の最大の違いは試験形式でした。

 

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 入門科までの進級試験はクラス全員が同じ教室に集まり、同時にテープを聞いて一斉に通訳を吹き込むという形式でした。しかし通訳科からは、1人ずつ部屋に入り、担当の先生2人の前で1人で通訳をするという、オーディション形式になりました。また試験前にお題を教えてくれたのも入門科までで、通訳科からは事前情報一切なし(本番5分前くらいにお題のみが書かれた紙を1枚見せられるだけ)で、一切の準備ができない状態で通訳をさせられました。

 

 通訳科以降の試験では、あまりのプレッシャーから普段好パフォーマンスができている人も滅茶苦茶な訳になってしまうことや、逆に普段上手くできない人が急に良い訳が出せたりすることもある、何が起こるか分からない試験だと学期が始まってすぐに聞かされました。

 

 更にクラス担当の先生からは、通訳科から同時通訳科への進級試験の合否の決定を下すのは小松先生だとも聞かされました。やっとその存在を意識できる場所まで来たのかと、その一瞬だけはジーンと自分の世界に浸ったのを覚えています。

 

 サイマルアカデミーでの進級の可否は、建前は「クラスでのパフォーマンスと試験を総合的に評価」となっていましたが、実際には進級できるかどうかは進級試験の出来次第、つまり学期末の一発勝負でした。普段のクラスでのパフォーマンスがどれほど素晴らしくとも、その一回で結果が出せなければ容赦なく不合格でした。生徒だった当時は「一回しかチャンスが無いなんて...」と毎回心が押しつぶされそうになっていましたが、通訳の仕事は毎回が一発勝負なので、全ての「一発」で最高のパフォーマンスが求められるから、ということなのだと今では理解しています。

 

 試験の評価という意味では期末試験のみの一発勝負だった一方で、試験の感覚をつかむために利用できたのが、進級に関係のない中間試験でした。当時の通訳科は前後期の1年間のクラスで前期から後期に移る際には進級試験が無かったため、通訳科の中間試験は前期の学期末に実施されました。

 

 中間試験も試験形式は進級試験と同じです。1人ずつ試験時間を予約し、その時間に学校へ行き、2人の先生方が待つ部屋に入って通訳をしました。

 

 通訳科の中間試験では緊張のあまり直前に見た英日のお題を忘れてしまい、話を聞いても何のことか全く理解できず、激流に流されながら水面に顔だけ出しているようなパニック状態の頭で通訳をしました。落ち込む必要もないほどにひどいパフォーマンスだったという自覚がありました。それでも声だけは妙に落ち着いていたのは覚えています。

 

 その中間試験後のガイダンスでは、先生から次のようなフィードバックがありました。改めて見てみると、自分の感覚と人の耳に届いているものは違うものなのだなと思います。だからこそ常に自分に厳しい目を向けていなければいけないとも思わされました。

 

指摘された点 

  • 細かい文法ミスがある 
  • 細部の情報の落ち 
  • 接続詞に「そして」を使いすぎる 
  • 良くも悪くもオリジナルの日本語を大切にしすぎて、英語表現が不自然な箇所がある 

 

良かった点 

  • クリアで落ち着いていて自信を感じられる声だった 
  • 語彙、知識、表現力と聞き手にメッセージを伝えるスキルが向上した 
  • 細部の情報は落とすもののメインメッセージはとれていて、意味の通る訳になっていた 
  • 英語表現が不自然な箇所も発音が良い故にナチュラルに聞こえる(笑) 
  • リスニング及び理解力が強い 

 

 そして入門科からずっと指摘されて続けていたフォーマルイングリッシュについて。

 

「特に気になった点はありません。硬い表現を的確に使えていましたよ。努力されたんですね。」

 

 また以前代講にいらした、もうひとつの通訳科のクラス担当の先生からのコメントも聞かせて貰えました。

 

「山下さんはやる気に満ち溢れていて、こっちまで元気が貰える生徒さんですね。」

 

 この先生が代講にいらした際、指名された箇所が聞き取れず(理解できず)、「もう一度聞かせてください」と言ってしまったことがありました。通訳者は一回で聞き取ることが求められるため、訓練であっても同様のパフォーマンスが求められます。本来二度目のチャンスをくださいという申し出はそれ自体があってはいけないことです。その時の先生の厳しい表情から良い印象は持たれていないのだろうと思い込んでいたので、とても意外で嬉しいコメントでした。

 

 最後に担当の先生からいただいたコメントに全身鳥肌が立ちました。

 

「山下さんを見ていると、将来専属になってバリバリ通訳している姿が見えるんです。それもとても強く。」 

 

 このガイダンスをしてくださった当時の担当講師は、サイマルインターナショナルの専属通訳者でした。専属通訳者とは卒業試験でA判定を受けた人のみに開かれる道で、通訳の仕事はフリーランス同様に単発のものがほとんどですが、正社員として仕事の数と毎月の給与が保証されているポジションです。

 

 結局私は専属にはなれませんでしたが、現役の専属通訳者の先生から「期待の星」宣言をいただいたこの時の興奮は、今でも忘れられません。

 

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