英語がくれる楽しさと自信(映画「マダム・イン・ニューヨーク」を観て02)

 こんにちは、東京在住英語同時通訳者の山下えりかです。Skypeでオンライン英語指導オンライン通訳訓練講座も提供しています。 

 

 前回の英語力よりも大切なこと(映画「マダム・イン・ニューヨーク」を観て01)ではこの映画の辛い面、主人公のシャシが英語で苦労するシーンについて考察しました。今回は主に映画の後半、明るくて楽しい面について書いて行きます。

 

 

 まずは前回にも載せたこの映画の概略から。

 

 この映画の主人公は、インドに住むインド人家族の母親シャシ。インドでは英語は準公用語とされ、ビジネスや教育で幅広く使用されている言語です。シャシの夫と子供達は当然のように英語を話しますが、シャシは英語がほとんど話せません。そのことを家族に馬鹿にされ傷つき自信を失うシャシ。そんな彼女が姪の結婚式のためにニューヨークへ行くことになります。式の準備を手伝うために家族より先にニューヨークへ渡ったシャシは、「4週間で英語が話せるようになる」という広告を見て現地の英語スクールに通うことを決意。様々な国籍と背景を持つクラスメイト達と共に学びながら日々増えて行く「分かる」「できる」を楽しみ、限られた時間の中でなりたい自分を求めて突き進む彼女の想いの強さに胸が熱くなります。英語を学んだことがある人であれば誰でもどこかに共感できる映画です。

 

 ニューヨークでのシャシの英語学習ライフに触れる前に、とても惹かれたシーンをご紹介します。

 

 インドからニューヨークまでの機内で、男性がシャシの隣に座ります。彼は飛行機に不慣れなシャシにCAさんの呼び方やヘッドホンのつなぎ方等を親切に教えてくれて、その明るさと優しさでシャシの一人旅の緊張を和らげてくれます。ニューヨークの空港に到着して早々、シャシは(何度も練習してきたのに)入管で上手く受け答えができず、通ることはできるものの軽く落ち込みます。そこに先ほどの男性が近寄って来て彼女にこう言います。

 

 「何事も‟初めて”は1度だけ。その1度は特別な体験だ。だから楽しんで。」(本当は英語で載せたいのですが半分以上ヒンディー語なので断念。)

 

 これは、これからニューヨークで彼女が経験する様々な変化を象徴する台詞です。この男性の出演時間はほんの短い時間で、このシーンが劇中で回想されることもありませんが、きっとこの人もその「特別な1度」を知っているからこそ出る言葉なのだろうなと思うと、とても素敵な台詞です。

 

 英語スクールに通い始めたシャシは、日々「分からない」が「分かる」に、「できない」が「できる」になる楽しさを満喫して行きます。私も毎日自分の英語力が伸びるのを全身で感じていた高校留学時代を思い出しました。ああいう時期って、英語を学ぶのが本当に楽しいんですよね。シャシも毎日少しずつ分かるようになる映画やニュースや新聞にとても楽しそうに、そして1秒も無駄にしたくないという真剣さで向っています。短期間で英語を学ぶには環境と向上心が大切だと改めて感じました。

 

 彼女の英語学習の姿勢としてとても好ましいのが、覚えた表現や単語をすぐに使ってみるという点です。言葉は記憶しただけでは忘れてしまいます。自分で実際に使って自分の一部にして行くものです。最初のうちは英語を口にすることすら億劫だった彼女が、英語のクラスを取り始めてからは失敗を恐れずにどんどん英語を使っていく様子は見ていてとてもワクワクします。

 

 ストーリーのクライマックスは、姪の結婚式でのシャシの英語のスピーチ。まだスラスラと言葉が出てくるほど流暢ではなく、ゆっくりと言葉を選びながらではありますが、自分の心の内をスピーチに絡めて言葉にします。シャシの英語とスピーチを聞いて(式の直前に合流した)家族は驚き、それまでの自分達の態度を反省します。

 

 ”Nobody can help you better than you.(自分以上に自分を助けられる人はいない。)”

 

 これはシャシがスピーチの中で使う一節です。自分の中で目標を設定するのも、その目標に向かってどんな方法が必要かを考えるのも、その方法でどれだけ努力するのかを決めるのも、すべては自分の決断。だからこそ手に入れたものが揺るぎない自信になるのだと、この4週間の彼女の挑戦をとてもよく表現しています。英語を学ぶ全ての人に贈りたい言葉です。

 

 最後に夢を壊すようで申し訳ありませんが、誤解のないように書いておきます。この映画のように英語圏の英語スクールに4週間通っただけでシャシを含む登場人物たちほどの英語力を身に付けることはほぼ不可能です。映画なので見栄え良く作っている部分もありますし、このスクールの受講生たちは既にある程度の英語力と英語を使う環境がある人達なのです。シャシは英語が苦手とは言え家庭内でさえ英語が使われている国の人ですし(よく聞いているとヒンディー語にも所々英語が混じっていますし)、他の受講生たちはニューヨークに住み仕事をしている人達です。「英語ができない人達」ではなく「日々否応なく英語を使っているけれど苦手だから何とかしたい」という人達が、「日常の意思疎通に困らない程度の英語力」を身に付けるためのクラスです。全くの初心者が同じクラスを取っても同じ効果は期待できません。同じ4週間を費やすなら、まずは中学英文法を完璧にマスターしましょう。行動に出るのはそれからです。

 

 英語を学ぶことをテーマにした映画「マダム・イン・ニューヨーク (English Vinglish)」ぜひ多くの英語学習者に見て欲しい一本です。

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行