通訳になるには?通訳に向いている人・向かない人

 こんにちは、東京在住英語同時通訳者の山下恵理香です。

 

 私事ですが、本日12月10日は私と主人の4回目の結婚記念日です。ネットで調べてみたら4周年は花婚式なのだそう。お花と知って少し嬉しい一方で、花よりケーキな食いしん坊です(笑)

 

 さて、今日は「通訳者に向いている人・向かない人」とはどんな人か、というお話です。これまで何度も受けてきた質問のひとつですが、いまいち自分のイメージ通りの返答ができずモヤモヤしていました。そこで今回は通訳の適性についてあれこれと考え自分とじっくり会話した末に私が辿り着いた答えをご紹介します。

 

 一般的に、通訳者に必要な適性、すなわち姿勢や能力には次のようなものがよく挙げられます。(あくまで一例)

 

 勤勉さ(通訳者の仕事は常に勉強)

 楽観的(失敗を引きずらずに前を向く力)

 謙虚さ(決して奢らず何事にも謙虚に取り組む姿勢)

 高い向上心(常に自分の能力を高めようとする意思)

 好奇心旺盛(どんな分野にも興味を持ち知識を増やそうとする姿勢)

 舞台度胸(一発勝負の緊張感に打ち勝つ力)

 不測の事態への対応力(不測の事態にもパニックを起こさず冷静に対処する能力)

 

 これはどれもとても通訳になるために大切な姿勢・能力です。ただ「通訳者を目指す上で必要な姿勢・能力」と考えると、何か少し違う気がしていました。なぜなら私は、通訳訓練を始めた時点でこれを満たしていたとはお世辞にも言えないからです。

 

 私は元々人前に出るのが好きでしたし、人前に出て何かをする緊張感はテンションを上げてくれるので、「舞台度胸」は昔からありました(これはずるいとよく言われます)。性格はどちらかと言えば楽観的だと思います。通訳訓練時代から自分には足りないものだらけだという自覚は常にあり、日々それを埋める努力をしています。好奇心は以前から旺盛でしたがあくまでも興味範囲内でのみ。通訳に興味を持ったのも最初は「英語が好きだから」という理由だけでした。今だから言えますが、サイマルアカデミーに通い始めたばかりの頃の私は時事にうとく、「日本の国政第一党は自民党であり、その総裁である安倍氏は総理大臣です」すら英語で言えないほどでした。

 

 上記の姿勢・能力を「オールクリア」と言えるようになったのは、サイマルアカデミーで通訳訓練を受け始めてからのことです。「英語が大好きだから通訳者になりたい」という一心で、常に自分の技術を磨き(向上心)、耳に入るもの目にするもの全てに強制的に興味を持つように自分を訓練しました(好奇心)。不測の事態への対応力はサイマルアカデミーの訓練で身に付けたものです。

 

 つまり上のリストにはやってみなければ分からないものもいくつか含まれています。ですから上記リストを見て通訳者に適した能力があるかどうかを訓練開始前に判断する必要はないと思います。ただし私にはこのリストにひとつ、付け加えたいものがあります。

 

 私が思う最も大切だと思う通訳になるための姿勢。それは、「絶対に通訳者になる」という強い意志を持ち、「通訳になるためにはどんな努力もする」という覚悟を持つことです。

 

 今現在上記のリストを満たせていないとしても、通訳者になるという目的のためであればどんな苦労も努力もいとわない、そんな強い気持ちを持って必要な行動を取り続けられるかどうかが、通訳者になる上ではとても大切なことだと、これまで来た道を振り返って強く思います。もちろん、そこまでして通訳者になりたいかどうかは、訓練の中で結論を出して行く人もいると思うので、必ずしも最初から覚悟を持っていなければならないとは言いません。しかしながら、その気持ちを固めるのが早ければ早いほど、それ以外の姿勢や能力を身に付けるのも早くなるはすです。

 

 「最後は気持ち」なんて古臭い根性論ですが、通訳者が常に己の腕一本で仕事をする性質の職業である以上、頼れるのは常に自分だけです。自分の心が折れればその仕事だけでなくキャリアごと失うという可能性は常について回ります。根性と覚悟なくしてできる仕事ではありません。

 

 次に「通訳者に向かない人」についても触れておきます。人の夢を壊すのは嫌なのであまり言葉にはしないようにしていますが、私が思う通訳者に向かない人は3パターンです。

 

 1つ目のパターンは、あがり症の人。訓練・仕事を問わず通訳という作業は常に空気が帯電するほどの緊張感と共にあります。緊張で頭が真っ白になってしまい言葉が出なくなる、訓練してみてもそれを克服できない、という人は、残念ながら通訳者には向かないと思います。これまでに数人そのような人を見て来ましたが、どうしても克服できない重度のあがり症の人は、それが治らない限り通訳は困難です。そして通訳者が言葉を紡げなくなれば困るのはお客様ですから、自分の「やりたい」という気持ちだけで突き進んで良いことではありません。

 

 2つ目のパターンは、間違った方向に楽観的な人。上記のリストにあるように、楽観的であるということは通訳者にとってとても大切な姿勢ですが、それはあくまでも反省を伴う場合です。通訳の仕事は途中でミスがあったとしてもそこで立ち止まることが許されないので、失敗の影響を次の訳に引きずらない前向きさが必要です。その一方で、後で時間ができたらしっかりと反省し、その失敗を繰り返さないようにする姿勢が大切です。ただ楽観的であれば良いと考え、失敗をすぐに忘れ何も学ばないのであれば、それは通訳者としては不適格です。

 

 3つ目のパターンは、上記リストを見て「自分には無理」と思う人。または自分では無理だと思いつつも、現役の通訳者に「大丈夫」と言ってもらえればできるんじゃないかと、甘えた考えを持つ人です。先述の通り、自分自身で「絶対になる」と腹を決めない限りそこを目指すことはできません。「あなたには無理」と言われて諦めるのなら、その人は絶対に通訳者には向きません。

 

 以上が私が熟慮を重ねた上で導き出した私なりの「通訳者に向く人・向かない人」の答えです。いち通訳者の意見として何かの参考にしていただければ幸いです。

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行